辻林美穂『さよならはそれなりに』感想|軽やかで切ない、別れの名曲

この曲をもっと知ってほしい

辻林美穂さんの曲『さよならはそれなりに』が、10万回再生されたというツイートを見たとき、「この曲を、もっと多くの人に知ってほしい」と、自然に思っていました。

彼女の曲はどれも繊細で、そして印象的なコード進行に彩られた、技巧派のポップソング。
シンガーソングライターとしても、作曲家としても実力は本物。

他にもいい曲が、たくさんあって、もっと評価されてもいいのに……そう感じることもしばしばあります。

でも、そんな“埋もれた名曲”に出会えることこそ、音楽の醍醐味かもしれません。

さよならは、悲しいだけじゃない。

この曲の存在を知ったのは、サブスクで偶然、流れてきたことがきっかけでした。この曲、あなたの好みかもよとAmazonミュージックのアルゴリズムが教えてくれたのかもしれません。アルゴリズム君えらいぞ。

私がこの曲を好きな理由は、「さよなら」をテーマにしているのに、決して悲しいだけではないというところです。

むしろ、どこか軽やかで、穏やかで、最後には希望さえ感じられるような雰囲気で終わっていく。
妖艶で美しいギターソロと、コーラスがその“余韻”に彩りを添えていて、聴くたびに、また聴きたいと思わせる。

そんな不思議な魅力がある曲なんです。

永遠と今——対比から浮かび上がる、人生の深み

歌詞に出てくる「永遠」という言葉は、おそらく“結婚”や“将来”を意味しているのでしょう。

でも、彼女はそれを願わない。はっきりと言葉にしないところに、彼女の気持ちが滲み出ています。

「今この瞬間が愛しいからこそ、未来に縛られたくない」

——そんな繊細で言葉にできない感情を、やさしく語っているように感じます。

恋愛ソングでありながら、それ以上の人生哲学のような深みを感じさせてくれる。そこも彼女の曲の魅力のひとつです。

本人は「歌詞に自信がない」と言っていたけれど

辻林さんは、以前「歌詞に自信がない」と語っていたことがありました。
……いやいや、そんなわけないでしょ!と、思わず心の中でツッコミを入れたくなります。

《“今”が薄れてしまうから/甘いくちづけ 首筋の香り/感じていたい》
《せめて私とは笑って終わらせて/微笑みのふたりが居ますように》

これだけの言葉で、こんなにも世界が広がる歌詞、他にあるでしょうか。

1番と2番を比べると、絶妙な対比になっていて、それが曲の世界観をぐんと広げている。

いや、これは作詞家だって、そう簡単にはできない。シンガーソングライターだからこそのテクニックです。

私は歌詞はあまり意識せず、曲で聴くタイプですが、それでも辻林さんの書く歌詞はなぜか心に残るんです。

何度聴いても飽きない

この曲は、辻林美穂さんの曲の中でも、一二を争うほど、たくさん聴いていて、何百回と繰り返し聴いています。

10万回再生のうちの、ほんのわずかですが、私の回数も多分そこに入っています笑
そして私はこれからも、ずっとこの曲を聴き続けるでしょう。

なぜ、何度聴いても飽きないかというと、きっとそこに「真実」があるからだと思います。

この曲を聴くたびに、新しい感情や景色が浮かび上がってくる。

それは、ここに描かれている別れが、ただの恋の終わりではなく、誰もが人生の中できっと一度は通る、「愛と手放し」の物語だからだと思います。

私たちは、人生で幾度となく別れを体験します。それは、恋や人間関係の終わりだけでなく、かつての自分自身との訣別もあるでしょう。

そうして、出会いと別れを繰り返して、前を向いて、今この瞬間をこれからも生きていく。

歌詞の中では、永遠をどこか遠くに置きながらも、実は永遠を最も感じられる。そんな不思議な魅力がこの曲にはあると思うのです。

辻林美穂さんの『さよならはそれなりに』。
もしまだ聴いたことがない方がいたら、ぜひ一度耳を傾けてみてください。

歌詞だけ読んだときと、実際に聴いたときでは、きっと印象が変わります。

さよならは、きっと、それなりに——
美しく、そして優しいものになるかもしれないから。

さよならはそれなりに(歌詞)

恋の始め方は
あなたが教えてくれた
すべてが 愛しく思えたわ
激しく重なり
溶け合うふたりのからだは
秋の葉のように紅く色を纏った

永遠って言葉は
お願い 言わないで
“今”が薄れてしまうから
甘いくちづけ 首筋の香り
感じていたい

真夜中はいたずらに
明日を手招きしては
紡いだ愛すらも
過去へと追いやるの
輝く”今”を
無下に捨てたりしないで
私が抜け殻になるまえに

恋の終わり方は
残酷なものばかりで
すべて 凍ましく思えても
あなたは私を
一度でも選んでくれた
愛した記憶を穢さぬように

永遠って言葉を
あの時受け入れて
“今”を積み重ねられたら
あなたの顔は
涙じゃなく笑顔で満ちたの?

さよならがあなたには
必ず悲しいものならば
せめて私とは笑って終わらせて
いつかあなたが
この日を振り返る時
微笑みのふたりが居ますように

だからこのさよならはそれなりに

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