心の調律師

私の元に来る人は、自分に厳しい方が多いです。
怠けてちゃだめ!もっと努力しなくては!もっと頑張らなきゃ!
そう思っている方がほとんどで、適当でいいいやという方はあまりいません。
私はそういう真面目な方にこう言います。
「もっと自分に甘くていいじゃないですか」
すると
「ええーそんなことしていいんですか?」
と聞かれます。
なので私は
「ええ、どんどん自分を甘やかしましょう!」
と答えます。
「嫌なことはやめましょう。やりたくないこともやめましょう。好きなことだけやりましょう。やりたいことだけやりましょう。とにかく徹底的に自分を甘やかしましょう」
私がそう言うと
「ええーーー」
と口では言いつつ、なぜかみんな顔がほころびます。
やりたいことをやる。やりたくないことはしない……。言いたいことはわかるけど、そんなことしたら、どんどん怠惰になって、人としてダメになるのでは?
そう思われるかもしれませんが、案外そうはならないものです。元々分別があり過ぎて自分に厳しい方たちなので、そうならないのです。逆にピンと張り詰めていた糸が、いい感じに緩んでバランスが取れてきます。私はこれを「心の調律」と呼んでいます。
ピアノやギターは、弦を張りすぎても、緩めすぎてもいい音は鳴りません。ちょうどいいところで調律することで、楽器本来が持つきれいな音が鳴ります。
人間も同じ。その人によって、ちょうどいいバランスがあるのです。張り詰めすぎず、かといって緩みすぎない。ちょうどいいバランスがあります。
私も会社員時代に気を張り詰めすぎて、心を病んでしまいました。今は緩みっぱななので、ちょっと締めないといけないくらいですが……。
ついつい気を張り詰めすぎる人には、緩める調整が必要だし、気を緩めすぎる人には、逆に締める調整が必要です。カウンセラーは相手の状態を見て、今は緩めるときなのか、それとも締めるときなのかを見極めることが大事です。
いい感じに調律できると、自然に笑顔が増えて、気持ちが前向きになります。
私はそういう姿を見るのが好きでこの仕事をしています。
編集後記
「ピアノのムシ」という調律師が主人公の漫画があります。
他の調律師が投げ出すような難しい案件でも、一音聞いただけで原因を見抜き、見事に問題を解決する……という感じの話です。
正直すぎるゆえ、超毒舌な主人公ですが、そこがまた魅力的でいいんです。